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洗剤の科学-界面活性剤-

 顔を洗う、食器を洗う、などなど毎日毎日お世話になっている洗剤。スーパーやドラッグストアに行くと、驚いてしまう種類の洗剤の数々。「キッチン用」「床掃除用」などなど。でも、実は、基本的にはこれらの汚れを落とす仕組みは同じです。しかも、その仕組みは意外と簡単。今日は、洗剤の科学についてお勉強してみましょう。

石鹸ってどんな形?


 まずは、洗剤の基本、石鹸について詳しく見てみることにしましょう。まずは、生活部門の「シミ抜きの応急処置-極性-」でご説明した大原則をちょっと復習。「極性の近いものどうしは溶けやすい」、要するに、似た者同士は仲良しなのです。油っぽいものは油に良く溶ける。水っぽいものは水に良く溶ける。
そして、石鹸の姿は下の絵のようになっています。石鹸の面白いところは、一つの物質の中に、「油と仲良しの部分」と「水と仲良しの部分」の両方を持っているのです。こういった物質のことを、「界面活性剤」と呼びます。

**界面活性剤のかたち**

どうやって汚れを落とすの?

  さて、この面白い構造をした石鹸は、どのような仕組みで汚れを落としてくれるのでしょうか?
1.水に濡れやすくする
とにかく、髪でも食器でも、水をはじいてしまっては何も始まりません。界面活性剤は、これらが水に濡れやすくなるように働きます。専門用語を使うと、「表面張力の低下」作用といいます。
2.汚れを包み込む
下のアニメーションを見て下さい。汚れは基本的には油汚れです。界面活性剤の油と仲良し(親油性)の部分が汚れにくっついて、汚れを包み込んでいます。汚れを包み込んだこの構造のことを、「ミセル」といいます。
**界面活性剤のはたらき**


3.汚れを水の中へ分散
そして、絵をみてわかるとおり、ミセルの外側はみんな水と仲良し(親水性)の部分です。ですから、汚れを包んだミセルは、きちんと水に溶けて分散します。この作用を「乳化」といいます。
これが、界面活性剤が汚れを落とす仕組みです。一つの物質で、汚れを落とすためにここまで働きをしているのがすごいですよね。洗剤って、地味ですが、実は働き者の物質だったのです。

他にもいろいろある「ミセル」→「乳化」

ちょっと話がとびますが、この「ミセル」→「乳化」という形を持ったものは、洗剤以外でもたくさん見かけることができます。例えば化粧品。乳液というのは、水の中に油の粒子が散らばった構造をしているものです。そして冷蔵庫にある牛乳も、マヨネーズもそう。逆に、油の中に水の粒子が散らばっているものもあります。例えば、化粧品のクリームもそうですし、バターも同じです。この「ミセル」→「乳化」というおかげで、これらのものは水と油という仲の悪いものどうしがバラバラに分離しないですんでいるのです。

石鹸の作り方

手作り石鹸の作り方などは一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。作り方の仕組みはとっても簡単です。油とアルカリ性の物質を混ぜて加熱して、余計なものを取り除いておしまい!です。家庭で作る場合には、加熱も余計なものをとる作業も省略することもあります。要するに混ぜるだけ。原料の油によって「親油性」の部分が、アルカリ性の物質によって「親水性」の部分が作られるわけです。何故使用済みの天ぷら油で石鹸ができるの?と不思議に思ったことのある方、こういう理由なんです。ちなみに、アルカリ性の強いものを使用する場合があります。苛性ソーダと呼ばれる水酸化ナトリウム、これはタンパク質を溶かす性質があるので、使用にはくれぐれも気をつけて下さい。皮膚が溶けてしまいます。

天然の石鹸

よく、「おばあちゃんの知恵袋」的なもので身近なものを汚れ落としに使うものがありますよね。ついでにそれらも科学してみましょう。
・パスタの茹で汁
パスタの茹で汁をとっておいて、油汚れの食器や鍋にかけると、見事に油汚れが良く落ちます。洗剤のジ○イのCMのように、油汚れがぱああっとお皿の縁に広がるのは見ていて面白いです。なかなかの威力。実は、パスタの茹で汁は「サポニン」という天然の界面活性剤が入っています。ちなみに、この「サポニン」の語源は、「シャボン」と同じ語源だそう。ちなみに、このサポニン、お茶にも含まれているので、抹茶が泡立つのも石鹸が泡だつのと同じ理屈です。

・米のとぎ汁
米のとぎ汁も軽い油汚れを落とすのに使えます。でも、この理屈はパスタの茹で汁とはちょっと違います。米のとぎ汁には、「アルカリ」が含まれています。「アルカリ」っていうのは、上の「石鹸の作り方」でご説明したように、石鹸の原料になるものです。要するに、洗いながら、「油汚れ」+「アルカリ」で、石鹸を合成してしまっているのです。これはすごい。でも、さすがに良い条件のもとで反応させているわけではないので、上の界面活性剤ほどは汚れは落ちません。

でも、古来から「アルカリ」で洗浄するという方法は日本でも良く使われていました。日本に石鹸が伝来したのは遅かったからです。どんなアルカリを使ったかというと、植物を燃やした灰に水を加えてできた上澄み、「灰汁(アク)」です。ちなみに、アルカリのアラビア語の語源は「灰」なんです。昔の日本では、米のとぎ汁とともに芋の茹で汁も汚れ落としに使われていたということです。

・レモン/オレンジの皮
柑橘類の皮で汚れを落とすことができるのは御存じでしょうか?研究員Aの母親がよく、灯油の交換のあとにミカンの皮で手を拭いていました。あれは、単なる匂い消しだけではなく、油汚れを落とす作用もあるのです。これは、柑橘類の皮に含まれる「リモネン」という成分のおかげです。ちなみに、これは界面活性剤ではないので、石鹸と同じように汚れを落としているのではありません。とても「油」な成分なので、似た者どうしの油汚れを溶かして落としているのです。

たかが石鹸といえども、意外と奥が深いものです。私たちの生活になくてはならない洗剤。でも、洗剤って水を汚しているのも確かです。これから、洗剤と賢くつきあっていかなきゃなあと研究員Aは珍しく殊勝な気持ちになったのでありました。

参考サイト 石けん百科
参考文献 スッキリきれいに暮らしたい 成美堂出版

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