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片腕は雌ドラゴン?近代化学の父ラヴォアジェ(1)

 あるとき『化学物語25講』という本を見ていたら、美男美女の肖像画が目に飛び込んできました。化学の内容のはずなのに、美男美女(?)。白いドレスをまとった女性が男性に寄り添い、それを愛おしそうに見上げる男性。その女性も美しいけど、男性の方も負けず劣らず男前!

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 その絵は『ラヴォアジエとその妻』と題された、あのナポレオンお気に入りだった画家ダヴィッドの作品。『ナポレオンの戴冠』『サン・ベルナール峠を越えるナポレオン』など、おそらく多くの人が見覚えのある絵を残している巨匠です。

  その『化学物語25講』には「ラヴォアジエ夫妻。夫人は実験記録をとるなど、夫の研究の手助けをした」というあっさりとした説明しかなかったので、この絵のラヴォアジエ夫妻にがぜん興味を抱いてしまう私だったのでした。肖像画とはいえ美男美女の化学者夫妻! このラヴォアジエ夫妻、取り上げないわけにはいけません。

近代化学の父

 さて、このラヴォアジエですが「質量保存の法則」「化学命名法の確立」など取り上げればきりがないほど化学の分野に貢献した人物です。「近代化学の父」と呼ばれますが、その名にふさわしい業績!
 それまで錬金術の延長にすぎなかった化学を、精確な計量に注目することなどで「学問としての化学」に引き上げてくれた「化学革命」を起こした人。数学・物理分野でいう歴史的教科書といえば、ニュートンの『プリンキピア』。それと肩を並べる化学分野の『化学要綱』という著書も残しています。「質量保存の法則」などと一緒に、中学の教科書の初めの方にその名が登場しているから、ラヴォアジエの名に聞き覚えのある方も多いかも?

化学は趣味? 副業?

 当時、科学で身を立てることは極めて困難な時代でした。でも、実は彼の本業は、徴税請負人というフランス政府の高級財務官僚。そして、その前は法学部出身の弁護士。どちらにせよ、お金持ちです。

 ついでに言うと、実家もお金持ちでした。実家の資産と、本業から得た資産を化学研究に注ぎ込んでいたのですね。そのほかにもフランス銀行の前身である手形割引銀行の総裁に就任。科学界、政財界、官界、貴族社会のすべてに顔が利いた、という万能で顔の広い大物だったのです。

ほとんど失敗のなかった天才!

  どんな天才でも生涯のうちにはトンデモ……とまではいかなくても、失敗とされる研究があるものです。アインシュタインが人生の長い間かけて研究した統一場理論もその一つですし、ニュートンも錬金術的化学にはまっています。でも、ラヴォアジエ場合はほとんど全てが成功と言われるものなんですよね。唯一、後世から見て「これは?」と思われるのは元素表に光と熱を入れたこと。でも元素表をはじめて体系化したことに比べるとささいなことです。

 ラヴォアジエの業績のひとつは、燃焼のしくみを解明したこと。当時は、燃焼は「フロギストン」と呼ばれる物質が空気中に出ていくこと、という説が主流だったのですが、彼流の精密な測定でそのフロギストン説を覆しました。そして、燃焼とは「酸素と物質が結合すること」と説明したのです。これは、化学界において大きな大きな進歩でした。

(続きます)

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