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「キレない子」に育つ?-触覚-

 最近の若者たちが起こす物騒なニュースを聞くと、「我が子が犯罪者になったらどうしよう」という心配がふとよぎります。今の研究員Bの愛らしい姿(失礼)を見ていると、そんな風になるとはとてもとても思えないし、思いたくもないんですけどね。「キレる」子にはしたくないなあと思うのは、今の親御さんたちの共通の願いじゃないでしょうか?今回は、キレない子にするために役に立つかもしれないお話です。

それには、「触る」ということが重要な役割を占めているようなのです。何だ、そんなこと?と思われるかもしれませんが、最近の研究でそのことを裏付ける結果が次々と出てきています。まずは、それらを紹介していきましょう。

タオル地の感触vs針金の感触

赤ちゃんサルで行った、H.ハーロウによる有名な実験をまずご紹介します(1959~69)。生まれて間もないサル8匹を、母親から離して別々の檻に入れます。それぞれの檻には、針金でできたロボットと、タオル地でできたロボットを入れておきます。4つの檻では、針金ロボットにほ乳瓶をつけておき、残りの4つには、タオル地のロボットにほ乳瓶をつけておきます。そして、小猿の行動を観察したところ、どの小猿も、ほとんどの時間をタオル地のロボットにまとわりついて過ごしていたということです。針金ロボットにほ乳瓶がついているケースでも、ミルクを飲み終わると、すぐにタオル地の方に戻っていってしまうのです。

この結果は、「幼児は生存に必要な飲食物を提供してくれる人に愛着を感じる」というフロイトの理論をくつがえすものです。食べ物をくれるモノに懐くわけじゃないのです。感触が大事なのです。幼児期には「触覚」がいかに大事かというものを示しています。

タオル地のロボットに育てられたサルたちは、大きくなってから他のサルたちと一緒になるとどうなるでしょうか。タオル地のサルたちは、他のサルに対して「無関心」で「暴力的」だったり「自傷行為」に走ったりする傾向がある、ということ。やはり、「タオル地」では感触としてはダメなんです。この小猿たちの姿は現代の子供たちの姿と見事に重なる、と吉成真由美さんは著書「やわらかな脳のつくり方」で述べています。

子ネズミを救うためには?

次に、ご紹介するのはL.カッツによる子ネズミの実験です(1996)。生まれて間もない子ネズミを母親から引き離すと、成長ホルモンの分泌が一挙に下がってしまって、成長ホルモンを注射しても、子ネズミの生命力の下落は防止できないとのことです。では、子ネズミを救うためにはどうしたらいいのでしょうか?唯一、しめった筆で体全体をさすってやることで母ネズミの舌の感触を真似した時だけ、子ネズミは助かるのだとか。この触覚によって成長ホルモンの分泌を促す遺伝子の発現が喚起されるのです。ホルモンを注射してもダメだけど、触ってあげれば大丈夫というのはびっくりの結果ですよね。

最近、「カンガルーケア」という、未熟児で生まれた赤ちゃんに対する治療法があります。赤ちゃんをお母さんの胸の上にぴたっとくっつかせてカンガルーのお腹の中にいるみたいにするケアです。肌で直接触れあうことによって、保育器の中にずっと入りっぱなしの場合よりも良い成長を示すのだとか。

流行している「ベビーマッサージ」。これも、同じく乳幼児に対する触覚の重要性を利用したものです。マッサージした新生児は、しなかった新生児と比べて毎日47%もの体重増加が見られ、平均して6日間も早く退院できたとか(T.フィールド;1986)。

脳の中ではどうなってるの?

「触る」ってことが大事っていうのは知っていたけれども、こういう「生命にも関わるのだ」という実験結果を見ると「ほほお」、って気になりますね。ここで、せっかくですから皮膚と脳のつながりもお勉強してしまいましょう。

「皮膚のここを刺激すると、脳のここが反応する」ということを調べると、面白い結果になります。見た目の面積そのままではないのです。どういうことかというと、他の部位に比べて、手足・顔(特に唇と舌)に刺激を感じる領域が脳の中の広い領域を占めています。「脳」のなかでの皮膚の面積の割合を、人間(?)のキャラクターに表現した作品をリンクしておきます(奥井宏幸氏の作品)。一目瞭然でわかりやすいのでぜひ見て下さい。このキャラクターを見ると解る通り、手足、唇の大きいところが印象的ですよね。だから、体の中でどこが敏感かというと、この大きく表現された部分だということになります。赤ちゃんが何でも口に入れたがるのは、敏感な感覚器である唇・舌で「検証」しているからなんです。だから、触るときは手足や顔を触ってあげるのが効果的、ってことになるのでしょうか?でも、これも感覚的に納得できる話ですよね。手を繋ぐのは嬉しい、ほっぺた同士をくっつけるのは幸せ、とか。

実際に「キレない」子に育つかどうかはわかりませんが、「触る」ことが少しは役に立つような気がしてきませんか?何より、「触る」とか「マッサージ」は、元手もかからないし、お手軽だし、やっている方も気分が良いし、実に良いこと尽くめ。実際、さするという効果は、さすられる方にだけ効果があるのではなく、さする方に「それ以上」の効果があるそうです。陳腐な、と切って捨てずに、今からでも子供と頻繁に「すりすり」するのはどうでしょうか?確かに、子供のふわふわの感触ってばハッピーになりますよね。

参考  やわらかな脳のつくり方 吉成真由美著
新・0歳からの教育 ニューズウィーク日本版
シアーズ博士夫妻のベビーブック W.&M.シアーズ著
参考サイト 奥井宏幸の「このバカも荒野を目指す?!」

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