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「私の脳科学講義」  利根川進著

ご存じノーベル賞受賞者の利根川進博士が、自らの歩んだ道や、現在研究している脳科学についての講義や対談をまとめた本、私の脳科学講義の感想文みたいなものです。利根川博士は、免疫学を専門にしていて「抗体の多様性の謎」を解明してノーベル賞を受賞しました。その後脳科学の分野に参入して、今は世界の脳研究をリードしています。

マネ、できないよね。。。

以前、立花隆との対談集「精神と物質」を読んだときも思いましたが、利根川博士、実に特異なキャラクターの方です。近くにいたら強烈だろうな、と。彼は京都大学の理学部化学科にいたのですが、卒論は全くやらないで卒業したとのこと。既に分子生物学を志していたので無駄だと考えたようです。バーゼル免疫学研究所に勤めていたとき、任期が切れて追い出されそうになっているのに居座って実験を続けたとか。その間無給だったらしい。うわあ。凡人にはマネできないです。「普通じゃないなあ」というエピソードのオンパレード。たびたび、「みなさんもこうすることをお薦めします」という記述が入ったりするのですが、マネできないもの、多いです。っていうか、天才の自覚がない限りマネしない方が無難じゃないかと思うのですが。

研究者のセンス?

途中、なるほどなあと思ったのが、良い研究を面白い!と思える「価値観」や創造的な研究を見分ける「センス」はどこで養われるのか?という話。研究の価値というのは相対的なものであるはずなのに、利根川博士が尊敬する科学者たちの間でその価値観は一致しているということです。要するに、「あの研究は面白い」「面白くない」という価値観が一緒ということですね。

それには、20歳そこそこの学生が最初から備わっているものではないので、創造性の高い研究を成し遂げた人のそばにいて、かつ、本人にしかるべきアンテナが備わっている必要があると利根川博士は言っています。

学生は、研究室に配属されて担当教官や周りの先輩の言葉、「この結果は面白い」「こんなつまらない文献紹介するな」「あの研究はいいね」などを聞きながら学んでいくんですよね。最初っからその「価値観」を身につけている学生はいないと思います。でも、その将来身に付く価値観は、どの研究室なり団体なりを選んだ時点である程度決定されてしまうわけです。うーん、コワイというかなんというか。だからといって、あまり研究室選びに頭を使ったって仕方ないんですよね。だって、所詮その時点では大した価値観持っていないですから。やはり勘?その勘がセンス、「本人のしかるべきアンテナ」になるんでしょうね。

すべての学問は脳科学に吸収される?

彼が再三繰り返して言うことは、「脳科学は心の働きを解明するので、いずれ哲学・宗教・心理学などすべての学問が脳科学に吸収されるだろう」と。ううむ。自然科学だって一種の宗教だと研究員Aは思うのです。「この自然科学的手法が正しい」と信じているからこそ成り立っている学問じゃないかと。でも、その「自然科学教」を信じて突き進むからあれだけの結果を生むことができる人なんでしょうね。もしくは、彼のなかでも疑いはあるのだけれども、正しいと思いこんでいるのかも。途中、「私はとても傲慢でね。自分が決めたことは間違いじゃないと確信しているわけ。一種のマインドコントロールです」と言っていましたし。

学生さんにはお薦めの本です。学生さんでしたら、利根川博士の語ることの中から研究者としての大事なエッセンス、そしてエネルギーをキャッチすることができるのではないでしょうか。

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