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内田麻理香プロフィール
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不思議な物質、水(2)-水素結合-

 前回の「不思議な物質、水(1)-周期律表-」では、周期律表のお話から、「いかに水が異常な物質であるか」ということをご説明しました。でも、水の不思議な性質はこれだけではないのです。今回は、「水素結合」のお話から、水の面白い性質を探ってみましょう。

水と水の間にも引力が

 コップの中に入った水を見て下さい。普通に見ていると、ただの見慣れた水です。さて、あなたが「水の1つの分子」と同じくらいの大きさになってコップの中に入ってみると。。。どんなことが起きているのでしょうか。
普通に見ると、水面が凪いだ「静かな」状態ですよね。でも、小さい小さい目で見ると、1こ1この水はぶんぶん動いているのです。でも、水の場合は分子が自由に動き回っているわけではありません。なぜかと言うと、分子と分子の間には「引力」が働いているからです。リンゴが木から落ちたり、私たちが地球に立っていられるのも引力のしわざです。それと同じように、分子と分子の間にも引っ張る力があるのです。だから、水の場合は、完全に自由に動き回ることができないのです。

 分子と分子の間に働く力。これは、水の分子だけではなく、どんなモノにも働いています。でも、水の間に働く力は、「水素結合」と呼ばれる特別なものなのです.この水素結合、他の分子の間に働く力よりも大きいのです。実は、前回からお話ししている水の異常さは、この「水素結合」のせいなのです。

沸点・融点が異常に高い

  前回の「不思議な物質、水(1)-周期律表-」で、融点・沸点が異常に高いことをお話ししました。実は、これも水素結合のせいなのです。固体→液体→気体と変化させるためには、分子の動き回るパワーを大きくしてあげる必要があります。実は、「温める」「火にかける」ということは、熱を加えてこの動き回るパワーを注入してあげているのです。水素結合のパワーは大きいので「動き回るパワー>水素結合のパワー」になるためには相当の熱を加えて水分子の動き回るパワーをたくさn注入する必要があります。だから、沸点(沸騰する温度)や融点(溶ける温度)が他の物質に比べると異常に高いのです。

水は凍ると膨張する

 缶ジュースを冷凍庫に入れて破裂させてしまった経験はありませんか?まあ、そんな劇的な経験はないにしても、残り物のシチューなどを冷凍するとき、容器の8分目程度にしておかないと膨張して大変なことになることは御存じでしょう。これは、水が凍ると体積が膨張することによるのです。これも、水素結合のしわざです。
 「水が凍ると膨張する」の逆を考えてみましょう。ということは、氷を圧縮すると水になるはずですよね。実際、そうなります。この性質を利用したのがスキーやスケートです。氷に体重で圧力をかけると、氷が溶けます。氷が溶けるから、滑ることを楽しむことができるのです。スキーやスケートができるのも水の変わった性質のおかげ!
 この「水が凍ると膨張する」という性質は、地球の営みの上で実に大切なものです。

氷は水に浮かぶ

 アイスコーヒーの中に氷が浮かんでいます。これは、私たちにとっては当たり前の現象です。他の普通の物質は固体になると重くなるので、沈みます。バターも融けた方が上に、固まった方は下にあります。氷が水に浮かぶというのも、実は不思議な現象なのです。この理由も、「水が凍ると膨張する」すなわち、「同じ体積では氷の方が軽い」からだと言えます。氷が浮くのも水素結合のしわざです。
 もし水が他の物質と同じ性質だったらどうでしょう。冬になって湖に張った氷は湖底に沈んで、春になっても太陽が当たらずどんどん溜まっていきます。北極の海底も氷で埋まっていくはずです。春になると氷が溶けるのは、表面に氷が浮いているおかげなのです。夏と冬がきちんと繰り返すのは、水だけが持つ特異な性質のなせる技なのです。

水が生物にとって大事なワケ

 下の表を見て下さい。水と他の物質の「気化熱」「比熱」を比較しています。「気化熱」というのは、液体が蒸発するのに必要な熱量のことです。「比熱」は、液体が1℃上昇するのに必要な熱量のことです。他の3つの物質に比べて、水の値がそれぞれ2〜3倍だということがわかりますよね。明らかにこれも高いです。
*水と他の物質の比較*
物質
気化熱 [cal/g]
比熱 [cal/g]
540
1.000
エタノール
204
0.581
メタノール
263
0.600
アセトン
125
0.528

 気化熱が高いという事実は、生物の何に役立っているのでしょうか。気化熱が高いということは、蒸発するときに多くの熱を奪います。つまり、生物が汗をかいて、温度上昇を防ぐことができるのは水のおかげなのです。そして植物でも、葉の表面からの水の蒸発によって温度上昇を防いでいるもです。
 比熱が高いことはどう役に立っているのでしょうか。1℃上昇するにも多くの熱量が必要、ということは、周りの温度が上昇しても、ある程度水温の上昇は抑えることができます。だから、環境の温度変化が激しくても、水を主体とした生物は体温が変化しにくいようにできているのです。

  「水素結合」といわれても、目に見えないものなのでイメージが捕らえにくいかもしれません。でも、生物が生きているのも、地球が凍り付かないのもこの「水素結合」のおかげだと思うと少しは親しみが湧くでしょうか?目には見えないけど、水分子ひとつひとつの間に働く小さい力のおかげなのです。


参考文献 図解雑学「細胞のしくみ」 新免輝男著

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