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3歳からでは遅すぎる?-早期教育-

 子供が産まれると、待ちかまえたように「早期教育」の勧誘の電話がたびたびかかってきたりします。「なにもそんな早いうちから」とは思うのですが、「3歳までが勝負」だとか「脳細胞が若いうちに」とか勧誘文句を聞くと、「むむむ」と自信が揺らいでしまう情けない研究員Aなのでした。でも、本当に3歳からでは遅すぎるのでしょうか? このことは、4〜5歳前後で記憶のメカニズムに大きな違いがあることと関係しそうです。4〜5歳までの記憶はあっても断片的で、ほとんど思い出せないし、恐怖などの深い感情的な傷も、一切説明できないのです。これは「幼児期記憶喪失」としてフロイトの時代からよく知られ、様々な理由が考えられてきました。

最近になって、脳科学の研究から、海馬とそれに繋がる前頭葉が4〜5歳になるまで充分に育っていないために起こるらしいことがわかってきました(ジェイコブ&ナデル;1985)。海馬とは、「旧哺乳類の脳」といわれる大脳辺縁系に属する、長期記憶の定着に関与している部分です。
 でも、4〜5歳までに起こったことは全部忘れているわけでもないのです。同じく大脳辺縁系に属する「扁桃体」という部分は生まれたときから既にその機能がほぼ整っています。扁桃体は海馬ほど高性能ではないので、ディティールのあることを系統立てて覚えてはいられないのですが、感情を伴った記憶はここでなされているのです。言葉以前の幼い頃の記憶は扁桃体が一手に引き受け、しかも一度記憶されると二度と消すことができないとのこと。幼児期に受けたトラウマが長い間その人を半ば無意識のうちに悩まし続けるということはこの理由によるものらしいです。

 従って、幼児期は記憶を司る脳の部位が未発達なのです。長期記憶を司る海馬が充分発達するのはだいたい5〜6歳とのこと。それ以前に、正確な知識を定着させようと思っても、そもそもかなり無理があるらしいのです。吉成真由美氏は「やわらかな脳の作り方」において、「6歳になれば1ヶ月で覚えられる平仮名を、何故2歳半で半年や一年もかけて覚える必要があるのか。」と記しています。

 さて、どうなんでしょうね。自分の子供がすごいと思うのも親心、自分の子供に何かしてやりたいと思うのも親心。とりあえず、研究員Aは今のところはのんびり構えることにします。

参考  やわらかな脳のつくり方 吉成真由美著

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