前回、「生クリームの科学-泡立て(1)-」で泡立ての理屈についてご紹介しました。泡立てとは洗剤の泡立つ理屈と深い関係があることがわかりました。それもそうですよね。同じ「泡」ですから。今回は、卵白の泡立て、すなわちメレンゲを取りあげてみましょう。メレンゲを作るためにはやれ使うボールは油分がついているとダメ、砂糖はどの段階で入れろ云々注文がうるさいですよね。実際、生クリームの泡立てに比べると難しい作業と言えます。それでは、その「科学」を探ってみることにしましょう。
さて、初めに前回の復習です。泡立てとは液体の中に気体が分散した状態(エマルジョン)でした。そして、泡立てるための条件は2つ。「泡を立てる」ことと「泡を持続させる」ことが必要です。それでは、これをメレンゲに当てはめてみましょう。
生クリームは「乳脂肪」の力で泡立ちましたが、卵白の場合はそれに含まれるタンパク質の「気泡性」と「空気変性」という二つの特殊な性質のおかげなのです。
結局、料理では安定したメレンゲが欲しいのですから新鮮な卵を使い、泡立てはじめは湯せんして温度を高くし、途中から冷やして泡の安定度を高めることがベストな方法と言えそうです。
これは卵黄の脂質の特別な状態にあるからです。卵黄は、水分の中に油分が分散したエマルジョンの状態です(「乳化」とも呼びます)。本来混じりあわない水分と油分。分散させるために卵黄の油分はレシチンという天然の界面活性剤(乳化剤)で覆われています。卵黄の油分はこの界面活性剤に覆われているので、泡立てでできた泡をダイレクトに攻撃しないのです。ですから、卵黄の油は泡立てをそれほど邪魔しないのです。
ちなみに、卵黄と卵白を一緒に泡立ててできる「共立て法」では泡のキメが細かいので、別々に泡立てる「別立て法」よりもしっとりしてふわっとしたスポンジケーキになります。それに使う道具の数も減るので、横着な研究員Aはいつも共立て法で作っています。
また、クレーム・タータと呼ばれる添加物を入れろとシフォンケーキのレシピに書かれていることがあります。このクレーム・タータは酒石酸水素カリウムです。水に溶かすと弱酸性を示すもので、レモン汁と同じ働きをするものです。
でも、一方で砂糖は卵白が空気変性を起こして膜状に固まるのを抑制する働きもあります。ですから、最初の段階から加えてしまうとなかなか気泡の膜を作ることができません。 砂糖を入れるタイミング
ですから、まず卵白だけを泡立て始め、かなりしっかりと泡立った状態で一部の砂糖を加え、さらに泡立てながら残りの砂糖を少しずつ加えていきます。こうすると最も効率的に状態の良いメレンゲを作ることができます。
でも、ハンドミキサーを使って泡立てる場合、撹拌力が強いのですぐに泡立て過剰になってしまう可能性があります。ですから、この場合は最初の段階から砂糖を加えておく方が失敗がないそうです。
研究員Aはこれを書いている最中無性にシフォンケーキが食べたくなり、卵6個分のメレンゲで作るシフォンケーキを焼いてしまいました。泡立ての科学を頭に入れて作ったシフォンケーキは今までで最高の出来!(ちなみに、シフォンケーキは硬すぎないメレンゲの方が美味しいものができるようです。)
卵白のタンパク質の特殊な性質
卵白を泡立て器で撹拌して徐々に空気を混ぜ込んでいくと、最初は大きな粗い泡ができますが、その泡は徐々に細かくなり、しっかりしたツヤのある気泡に変化します。生クリームは「乳脂肪」の力で泡立ちましたが、卵白の場合はそれに含まれるタンパク質の「気泡性」と「空気変性」という二つの特殊な性質のおかげなのです。
卵白の「気泡性」
さて、液体に空気を取り込むには表面張力を小さくすることが必要でした。卵白にはずばり、表面張力を小さくするタンパク質が含まれているのです。ですから、卵白は空気と接することが可能になり、たくさんの気泡を取り込むことができるようになるのです。卵白の「空気変性」
そして、メレンゲの「泡を持続させる」力は何でしょうか?これは、卵白の中に空気に触れると変性を起こして膜状に硬くなる成分が含まれているからなのです。取り込まれた空気によってタンパク質が変性し、このタンパク質の作用によって気泡が安定化され、しっかりとしたきめ細かいメレンゲができるわけなのです。相反する条件「泡の立てる」vs「泡を持続させる」
実は、「泡の立てる」と「泡を持続させる」ことは相反する条件なのです。古い卵は、粘性が低く表面張力が小さいので泡立てやすいのですが、安定性は悪い。また、泡立てる時に温度を高くすると表面張力が小さくなるので泡立てやすくなるのですが、やはり泡の安定性が悪くなります。まさに、「あちらを立てるとこちらが立たず」。結局、料理では安定したメレンゲが欲しいのですから新鮮な卵を使い、泡立てはじめは湯せんして温度を高くし、途中から冷やして泡の安定度を高めることがベストな方法と言えそうです。
泡立てを邪魔する「油」
メレンゲを作るときのレシピの注意書きに必ずと言って良いほど「泡立て器やボールに油分がついているとダメ」と記載されています。これは、一般にサラダ油やバターなどの油脂が卵白にできた気泡、すなわちタンパク質の膜を破壊する作用があるからなのです。卵黄は大丈夫
でも、スポンジケーキでは卵黄と卵白を一緒に泡立てる「共立て法」という方法があります。メレンゲほどじゃないにしても、立派に泡立っています。卵黄にだって油分がいっぱい含まれているのになぜでしょう?これは卵黄の脂質の特別な状態にあるからです。卵黄は、水分の中に油分が分散したエマルジョンの状態です(「乳化」とも呼びます)。本来混じりあわない水分と油分。分散させるために卵黄の油分はレシチンという天然の界面活性剤(乳化剤)で覆われています。卵黄の油分はこの界面活性剤に覆われているので、泡立てでできた泡をダイレクトに攻撃しないのです。ですから、卵黄の油は泡立てをそれほど邪魔しないのです。
ちなみに、卵黄と卵白を一緒に泡立ててできる「共立て法」では泡のキメが細かいので、別々に泡立てる「別立て法」よりもしっとりしてふわっとしたスポンジケーキになります。それに使う道具の数も減るので、横着な研究員Aはいつも共立て法で作っています。
泡立てを助ける「酸」
卵白は本来アルカリ性を示す食品ですが、中性付近の方が泡の安定性が高いのです。ですから、少量のレモン汁を加えると泡の安定度が高くなります。また、クレーム・タータと呼ばれる添加物を入れろとシフォンケーキのレシピに書かれていることがあります。このクレーム・タータは酒石酸水素カリウムです。水に溶かすと弱酸性を示すもので、レモン汁と同じ働きをするものです。
ただ甘くするだけじゃない「砂糖」
お菓子作りに用いるメレンゲは砂糖を入れて泡立てます。この砂糖、きめの細かいしっかりしたメレンゲに仕上げてくれます。砂糖は水を引き付ける力が強いので(参照「砂糖の科学」)、できた気泡の安定性を高めてくれるのです。でも、一方で砂糖は卵白が空気変性を起こして膜状に固まるのを抑制する働きもあります。ですから、最初の段階から加えてしまうとなかなか気泡の膜を作ることができません。 砂糖を入れるタイミング
ですから、まず卵白だけを泡立て始め、かなりしっかりと泡立った状態で一部の砂糖を加え、さらに泡立てながら残りの砂糖を少しずつ加えていきます。こうすると最も効率的に状態の良いメレンゲを作ることができます。
でも、ハンドミキサーを使って泡立てる場合、撹拌力が強いのですぐに泡立て過剰になってしまう可能性があります。ですから、この場合は最初の段階から砂糖を加えておく方が失敗がないそうです。
研究員Aはこれを書いている最中無性にシフォンケーキが食べたくなり、卵6個分のメレンゲで作るシフォンケーキを焼いてしまいました。泡立ての科学を頭に入れて作ったシフォンケーキは今までで最高の出来!(ちなみに、シフォンケーキは硬すぎないメレンゲの方が美味しいものができるようです。)
参考文献 「お菓子「こつ」の科学」 河田昌子著
「調理とサイエンス」 品川弘子他著
「お菓子作りのなぜ?がわかる本」 相原一吉著
参考サイト 鈴木クニエのてくてく