ノーベル賞のある時代だったら、2つも3つも受賞したかも? と評される男がいる。その名はマイケル・ファラデー(英国)。半導体、電磁誘導の法則、ベンゼンの発見者だ。このうち一つ抜けても、現在の我々の生活は成り立たない。まず電化製品が消え失せる。それ以前に電気も供給されない。そして洋服や医薬品等にも不自由するだろう。私たちが暮らしているのは、200年以上前に広範囲で功績を残した彼のおかげだ。¥あのアインシュタインもファラデーを尊敬し、書斎にファラデーの肖像画を飾っていたという。
そんなファラデーの弱点は数学だった。彼は極貧の家庭出身で、少年時代から製本屋で徒弟奉公をしていた。職場の本で独学して基礎知識を身につけたが、数学は歯が立たなかった。そこで彼の研究は数学が登場せず、図でモデル化されたものばかりになる。
しかし、数学を使わないことがファラデーの強みとなった。数学というフィルターを通さなかったから、自然に迫る嗅覚を研ぎ澄ませ、発想豊かな業績が生まれたのであろう。
自然を記述する共通言語として数学は必須だ。数学を巧みに操る人は、それが強力な武器になる。だがファラデーの場合はできないことが武器になったのだろう。アインシュタインも、直観とアイディアの科学者だった。数学は得意とはいえず、彼の一般相対性理論の数式化は、友人の数学者・グロスマンが大きな力を貸した。
弱みは時として誰にも負けない強みに変じることがある。
平成21年4月21日(火)掲載