科学好きな人が、それに魅せられきっかけは何だろうか。私は今、いろいろな人にその質問を投げかけている。大方の人は即答しない。困ったような顔をして、記憶をたぐり寄せる。そして「あの時がそうだったかも」という曖昧な答えが返ってくる。
私は同じ質問をされた時、毎度「中学生の時に観た『機動戦士ガンダム』の映画」と答えていた。実際、そこに登場したスペースコロニーを作りたいと思い、理系進学を決めたのである。
しかし、他の人の回答の様子を見て、自らの過去も振り返ってみた。考えてみれば、私はそれでスイッチが切り替わるように科学好きになったわけではない。幼少時から興味があり、図鑑を頼りに自己流の実験をしていた。物心ついた頃にはそうだったから、きっかけは思い出せない。
一目惚れはともかく、恋に落ちる瞬間も同様かも、という連想をしてみる。つかみどころのない好意という土壌の上に、「何か」が起きて恋のスイッチが入り、アクセルが踏まれる……ことが多い気がする。
科学に対する「つかみどころのない好意」はいつ形成されるのだろう。幼い子どもを見ていると、生まれつき持ち合わせていると思う。彼らは好奇心の塊だ。「科学好き」へのアクセルペダルは、世の中にあふれている。子どもたちがブレーキペダルと遭遇してしまう前に、アクセルペダルの存在を知らせる。それだけでも「科学離れ」は改善されるかもしれない、という想像は甘いだろうか。
平成21年6月9日(火)掲載